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インターネット死体蹴り

灯台へ

けものあぶらの火にあぶられ

ランタンのがらす窓がくろく油じみで煤けてゆく

灯台守としての日課である夜ごとの火入れのため

背筋のまがった老父は

ふじつぼまみれの磯べりの階段を

シブレの杖をついてくだってゆく

目なきである海底泳行群を導くための深海の焔は

三基のあんこう信号の触手の先で鈍く明滅し

老父の節くれ立った指がえさ袋から 生体信号機の燃料となる

おきあみと魚粉とこむぎの練り餌をとりだした

餌をばらまくうちそのこうばしい香りに食欲をそそられたのか

なん疋かのうみねこが磯へうちあげられて

尾びれと背びれをべったららと鳴らした

えらが大気中の毒素を否応なく吸ってしまうので

にいおう、なうおうと耳をたらして弱々しく啼きわめく

ふだんはなさけごころを起こさぬ老父も

こんな湿っぽく膝関節の痛む夜には

霊長類らしい気持ちも湧くとみえて

掌に一握の海水をとると

ひからびたうみねこたちを濯ぎぬらして海へと帰した

海鳴りに乗じて黒々とした重油の海へと泳いでゆく

老父はふたむかしまえの流行歌をくちずさんだ

二十四時の時報が鳴る

重々しく深夜の埠頭から夜明けの湾内へと轟く大砲の音…