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インターネット死体蹴り

熱帯夜における熱交換について

空調のきかない室内の 腥くまとわりつく汗は粘膜めいて生ぬるく

真夏の温室のようなむし暑さに耐えかねて

僕はとうとう雑木林へ繰りだした

街灯と街灯をつなぐ闇が 体液に混じってねっとりと僕の体に絡みつく

手足にたかるヤブ蚊を叩き 轢かれた蛇のなきがらをまたいで

やがて遠くにコンビニの消えない明かりが見えてくる

冷房がきんきんにきいた店内を

胃袋に染みとおる爽やかなソーダ水を

喉と皮膚で十全に味わおうとしてしぜんと速くなる僕の影

僕を出迎えるお馴染みの入店音

深夜勤の中年店員が充血した目で僕を一瞥する

売れないホットスナックは もう何十年もその棚に飾られて

唐揚げ棒なんぞはデボン紀の地層から発掘したような黄土色だ

奥の飲料コーナーでは

若いカップルがたがいの体を触りあい

不意打ちの熱源となって周囲をむごたらしく照らしている

彼らが極薄の避妊具を買い求め

これから家に戻ってベッドの上で互いの熱をせわしなく交歓し

この町にあたらしい発電所を作ろうと考えているのは、誰の目にもあきらかだ

 詳らかにせよ僕を苛むこの苦痛を

寄りかかってくる女をもたない男のせつない言い分を

少子高齢化の進む日本列島に長らく蟄居して

なお人類の増殖に貢献しようともくろむ活発なエネルギー生産者たちを

燃え上がる生命の火種をこねまわす愛撫を妄想しては

疎ましく、羨ましく感じられ

ただうちのめされ 身体を灼く廃熱をもて余した敗残者として

僕は独り寂しく焼きスルメとすだち缶酎ハイなんぞを購い

アルコールを呑んで獲得したはかない熱を発散して

地球温暖化の加速にささやかながら貢献してやろうなどと考えたのだった