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インターネット死体蹴り

懸想

貴女の肌のクチクラ層へ 僕の唇は千枚通しの役目を果たした 貫かれた心臓は毀たれたことばを拾い集め 夜ごと囁かれた睦みごとの断片はそこかしこに霧散し たおやかな愛情を帯びて大気中で摩擦を起こし 激しく赤熱して そこかしこに脈打ち 燃え尽きてなお消え…

氷壁

君のスープを温める者はいない 君の奪われた靴を 取り戻してくれる者はいない なにを期待すべきだったのか、そして なにを期待すべきではなかったのかを問いつめても 明確な答えが返ってくることはなく ただ無言の氷壁のみがその厚さを増してゆく

赤貧

窒息する/窒息しかけているのを 僕らは身をひそめて手足をちぢめて確認する 呼気に含まれる酸素は目玉が飛びだすほど高価く、僕らは なけなしの貯金を切りくずし かろうじて生きるに足りるだけの呼吸を手に入れる 肺胞に幾ばくかの酸素を送り だがそれは つ…

熱帯夜における熱交換について

空調のきかない室内の 腥くまとわりつく汗は粘膜めいて生ぬるく 真夏の温室のようなむし暑さに耐えかねて 僕はとうとう雑木林へ繰りだした 街灯と街灯をつなぐ闇が 体液に混じってねっとりと僕の体に絡みつく 手足にたかるヤブ蚊を叩き 轢かれた蛇のなきがら…

のけ者

孤独なのけ者 彼は住む家をもたない 着る服をもたない 慈悲をもたない 愛する心をもたない 彼は食べるため半ばの暗い森をうろつく 煮炊き火の宿る里をうろつく 苔むした塁壁の城址をうろつく 歩みはのろく 行くあてもない 彼はなかまのケモノの肉を喰らう 皮…

海への帰郷

修学旅行のふつかめ 宿泊先の民宿の裏口からサンダルをつっかけて 歩くでもなく歩きだした 夜の砂州をあてどなく歩くにつれ 僕のつま先はすべらかな白砂にじぶじぶと沈んだ 粒状の砂は僕の足をやわらかく包んで、荒波の沖合いへ連れ戻そうとする 僕はそこか…

地を這う生活者

僕はまだ土地に根ざした活動をやりとげて いないと感じる。僕の体は僕の住む土地に親水しない 根腐れを起こし、僕の体は腐敗した藻類として流れる水への抵抗を持たない 今はかろうじて持ちこたえているが、大水が出れば砂礫と土砂に埋もれ 澱んだ水底でにお…

万年筆のシミ

パイロットの安物の万年筆で コクヨの測量野帳に殴り書きした文章をまとめたものです。 このブログは 生活の断片と、断片化した作物があるだけで、 それ以上の他意はありません。